04. わたしのSmile Food。

1. mountain△grocery

2. focaccia e vino TETTO

3. まきぐち農園

やさいだいすき!

カラダは正直なもので、塩辛いものを沢山摂取すると水を欲するように、カラダが野菜不足を察知すると、無性に野菜が食べたくなります。

野菜がしっかり取れているとカラダが軽く感じ、調子もいい。

カラダの調子がいいと気分もいい。

人のカラダは本当に上手にできているなと思います。

だからという訳ではないんですよ。

今回は偶然にも、野菜を美味しくいただけて、食べ終えるころには心もカラダも満たされる、そんな店を紹介したいと思います。

また今回は美味しさはもちろん、安心安全にも配慮したお米や野菜づくりをされている農家さんも紹介いたします。

今や私たちの関心ごとは美味しさだけに留まらず、安心安全、地球環境に配慮したサスティナブルな取り組みにまで広がっています。

私たちの食を支えている農家さんが、日々どのようなことを大切にして取り組まれているのか、また未来の農業について話を伺いました。


1. mountain△grocery

         マウンテン△グロサリー

食は生きる糧。そこから見えてくるものがある。

 沼垂テラスに小柄な店主yoyo.さんが営む店がある。店の名は「mountain△grocery」。パステルピンクの引き戸を引いて店に入ると、yoyo.さんがカウンターからひょっこり顔を出して元気よく迎えてくれる。レトロな店内は、一枚板のカウンターや木のスツール、ハンドメイドの人形に切り花やドライフラワーなど自然の温もりや人の手による温かさを感じつつ、パステルピンクとネオンライト、ポップアートがアクセントになっていて、落ち着きと楽しさが同居。このミックス感が私にとって居心地の良さとなっている。

 mountain△groceryといえば私の好きなファラフェルサンド。ファラフェルやフムス、その他季節の野菜を使った惣菜数種類が自家製のピタパンに挟まれたボリュームたっぷりのサンドだ。ファラフェルは東京で何度か食べたことがあったけれど、新潟で食べられるとは思っていなかったので嬉しかった。一品一品どれも美味しい。素材の良さに加え、スパイスが程よく効いた味つけが何度食べても飽きさせない。すべて植物性の材料だけを使用して作られているが、美味しいものを食べているという感覚でしかなく、お腹も気持ちも満たされる。だから沼垂テラスに来た時はmountain△groceryに自然と足が向いてしまう。

 mountain△groceryの料理はスパイスづかいが印象的。料理には人がでる。yoyo.さんの場合も然り。子どもの頃から長年体感したものがyoyo.さんの中で濾過されて、スパイスと混ざり合って料理の味となっている。

 Yoyo.さんは初めは料理の道へ進もうとは考えていなかったという。東京で生まれ育ち、二十歳の頃にパリに渡ってファッションを学ぶ。渡仏前のイメージと違い、パリは人種のるつぼ。様々なルーツを持つ人が暮らしている。異国の料理店も多く、そこでファラフェルを含む様々な国の料理に触れたのだそう。店内の内装や器にカトラリー、ワイングラスなど、一つ一つにyoyo.さんがこれまで培ってきた感性が生かされているようだ。

 yoyo.さんの料理のルーツはパリかと思ったが、パリよりも前、子どもの頃にあるという。美味しいものが好きな両親のもとに育ち、近くの農家から買った野菜や養鶏場から買った卵で料理してくれたり、各国の料理が食卓に上がることが度々あったのだそう。

 ヴィーガン料理を作るようになったきっかけは、アパレルの仕事をやめた後に初めて出かけたインドへのバックパック旅行。

「南を中心に周りましたが、旅をしていた一ヶ月半、肉と魚をほとんど口にしていないことにふと気づきました。動物性のものを食べなくても体調がいいなんて、もともと野菜が好きな自分に菜食は合うのではないかと思いました。そこから環境のこと、世界の食糧事情のことを調べ始めました。また環境問題や食糧事情の他、食べものを自分で作って手に入れることの大変さに気づき、それからは必ず誰かの手を通して自分の元にきていることを意識するようになりました」

この経験が今のyoyo.さんの暮らしや生き方のベースになっているようだ。

 yoyo.さんが料理の世界に足をふみいれたのは東京の高円寺に住んでいた2006年。知人のバーを1日借りて、南インドのサンバルや定食「ミールス」を作って提供してみたところ好評だったため、初めは月に一回、次第に週に一回ヴィーガン料理を提供する「VEGEしょくどう」を開くことになったのだそう。新潟に来るきっかけとなったのは、友人が十日町市松代にオープンしたゲストハウス。大地の芸術祭会期中に彼らがプロデュースした食堂施設の料理人としてひと夏滞在。そこで中山間地の暮らしに惹かれたという。その後は沖縄での暮らしを経て新潟の中山間地に”地域おこし協力隊”の制度を利用して滞在。

「山には街の人にはあまり知られていない面白い食材が多くて、東京や新潟でイベント出店する際に”さとのたべもの”を英語にしたmountain groceryという名前で販売していました。街の人に里のものをより高い価値で買ってもらい、里で今でも継承されている文化を継続させるようなことができればいいなと街で店を持ちたいと考えるようになりました。そんな中、相談していた友人の店舗が空くことになり、入居希望と手を挙げました。新潟市にしたのは母の実家があり、大好きな祖母がいることと、大都会ではない、ちょうどいい都会だと思ったからです」

 私の好きなファラフェルはVEGEしょくどうをやっていた時から作っていたメニューなのだそう。”たべることはいきること”をテーマに無農薬野菜を作っている人から買って調理していたそうだ。mountain△groceryではできる範囲で、生産者や栽培方法が把握できるものを使っているという。yoyo.さんに美味しさの秘訣は何かと聞いたところ「美味しいものを食べたいという気持ちではないかと思います」と答えてくれた。確かにそうだ。美味しいものが食べたいから美味しい作物を作り、美味しいものが食べたいから作物を美味しく調理する。そして美味しいものが食べたいから美味しいうちに食べる。全ては美味しいものが食べたいという気持ちにつながっている。

 今年の8月で開店してから2年になる。これまでに大小様々なことがあったけれど、いつもお客さまには来てくれてありがとうと感謝しているという。今後については1日1組のお客さまを丁寧にもてなしていきたいと考えているそうだ。

「お客さまの好みを伺い、それに合わせた料理をお作りしたいと思っています。ヴィーガンの料理だけでなく、新潟ならでは、近隣でとれた新鮮な魚や、つながりのある猟師さんの県産のジビエもご希望があれば調理しています」

 yoyo.さんは新潟で自分の店を持とうと思った時に大切にしていこうと思ったことについてこう語ってくれた。

「世の中には存在しているけれど見えていない大切なことがあります。今まで無かったもの、気づかなかったものを作るのは、それだけで価値があると思っています。なぜなら選択肢が広がるから。自分は違和感を与える存在でいようと思いました」

初めてのことをする場合や少数派の場合でも、愛情や熱意を持ってやっている人は周りにも伝わるものだ。mountain△groceryを訪れるといつもお客さまが気持ちよく食事をしている。それはyoyo.さんの思いややりたいことに共感しているからだと思う。

1: ゼンマイや菊芋の入ったタジン鍋

2: タジン鍋にクスクスを添えて

3: 中東発祥のひよこ豆のコロッケ ファラフェル と ひよこ豆のペースト フムス


mountain△grocery

新潟市中央区沼垂東3丁目5−16

☎︎ 090−6516−8626

カフェ営業日: 土・日・月曜日

12:00−17:00

※コース、ケータリングの予約は火曜日−金曜日も受付中(1週間までに要相談)



2. focaccia e vino TETTO

  フォカッチャ エ ヴィーノ テット

本質を見失わず、イタリアの魅力を伝える。

 古町を白山神社方面に向かって行くとイタリア料理の店「focaccia e vino TETTO 」(以下 TETTO)がある。通りに面した窓から店の奥へと差し込む柔らかな光。木の温もりを感じる落ち着く店内。新潟市の中心部にいながらにして、山の中の店に入ったような気分になる。

TETTOに来ると落ち着くのは店内の雰囲気だけではない。料理を食べていても気持ちが穏やかになる。料理はどれも奇をてらったところがなくシンプル。それでいて滋味深く美味しい。

 私が好きでよく頼むのはサラダランチ。サラダのボリューム感がたまらない。サラダにはパテやハム、イタリアンオムレツのフリッタータ、キャロットラペ、その他に日替わりの惣菜が盛り付けられていて、どれも美味しい。サラダにはフォカッチャがつく。ローズマリーとオリーブオイルの香り、程よい塩味が食欲をそそる。お腹の具合によってはカップスープを追加する。ある日のスープはミネストローネだった。私の知る赤いミネストローネではなく、白いミネストローネ。イタリアのミネストローネはトマトは入っているけれどもトマトがメインではなく、いろいろな野菜の味を楽しむスープと知ったのもTETTOで食べたミネストローネがきっかけだった。

 TETTOがオープンしたのは2015年5月。自分の店を持つことを目標にイタリア料理の世界に入った店主の丸山美希さん。丸山さん自身が日常使いできる店の存在が貴重だったため、自分の店を持つ際は、特別な日というよりも日常的に気軽に立ち寄れる店にしていこうと思ったのだそう。

「TETTOはイタリア語で屋根という意味なんです。雨宿りの時に駆け込める、そういう屋根の一部のようになれたら良いなと思って、店名をTETTOにしました」

 丸山さんは国内のイタリア料理店で料理を学ぶ他、実際にイタリアへ渡り料理を学ぶ。イタリアに渡る際、食材が美味しいというのは想像していたけれど、イタリア人の郷土愛の強さに驚いたという。

「自然豊かな街が沢山あり、中心部から少し離れると見渡すかぎりの美しい景色。高い建物がありません。イタリアでは高い建物を建てるよりも美しい景観を残すことを大切にしていました」

そんな郷土愛の強いイタリアにいると、だんだんと新潟が恋しくなってしまったそうだ。

また、イタリア人が勤勉だったということにも驚いたという。

「イタリア人はあまり働かず、よく休憩を取るというイメージでしたが、実際に行ってみると、思った以上に働いていたので驚きました」

イタリアの料理店は営業時間が短いが、その分仕込みに時間をかけており、営業時間中はお客さまに満足してもらうことに集中して働いているのだそう。まるで丸山さんのようだ。TETTOでは丸山さん一人で店を切り盛りすることも多い。来店客が多い時間帯でもお待たせすることなく美味しい料理を提供してくれる。きっと仕込みに時間をかけているからだろう。

 丸山さんはイタリアがとても好きでイタリアの文化を大切にしている。

「野菜自体が好きでイタリア料理を目指しました。イタリア文化を知って欲しくてお店をやっています。フォカッチャは日本人に合うようにアレンジしていますが、それ以外のイタリア料理は大きく変えないようにしています。イタリア料理は素材の使い方がとてもシンプルなんです。沢山手をかけて美味しくするのではなく、美味しい素材そのものの味を活かすように調理しています」

 TETTOで使用する食材は、信頼を寄せているところから仕入れている。野菜であれば、できるだけ国内の地場のものを使用。地場のものは旬のものが出回るため、身近で手に入りやすく美味しいという理由からだ。年に何回か生産者に会いに行くこともしている。一緒に収穫を手伝ったり、野菜を食べさせてもらうこともあるそうだ。時には、生産者とイタリアで食べた料理や見た景色などの思い出話をすることで料理のイメージに繋がることもあるという。魚であれば、魚屋と話をしながら料理に使う魚を決める。魚の脂の乗り具合など、魚の状態を把握した上でどんな料理に向くかアドバイスしてくれるのだそう。

 TETTOで扱っているワインは全てイタリアのワインだ。コロナの感染が広まる前までは、ワインを身近に感じてもらおうと月に2回ワインの価格を抑えて提供していた。それはワインの敷居を下げたかったからだという。ワインは知識がないと飲んではいけないと思われている人が少なくない。イタリアワインは美味しくてお手頃なものが多い。ワインの知識の有無に関係なくワインを楽しんで欲しいと思ったからだそう。また落ちついたら再開したいそうだ。

 コロナの感染が広まって約1年。その間に変わってしまったことは多いが、悪いことばかりではなかったという。

「料理と接客の両方をうまくこなすことができないため打撃を受けるのではないかと心配していました。しかし、コロナが広がっても変わらずに常連さんが来てくれたり、気にかけてくれました。同業者も食材を持ってきてくれたり、イベントに誘ってくれたり、色々と気にかけてくれ、横のつながりが強くなったと感じました。今まで以上に信頼関係と感謝の気持ちが強くなりました」

 TETTOは今年の5月で6周年を迎えた。丸山さんはお客さまの「美味しかったです」との一言が何よりも嬉しいという。沢山のお客さまが店を愛してくださっていると感じ、日々の励みにもなっている。丸山さんに今後についてを伺ったところ、「70歳まで厨房に立っていたいですね。お店を続けられるように健康でいたいと思います。それから今よりも笑っていたいですね。今も色々ありますが、それも楽しめるような大らかさと器が欲しいです」と語ってくれた。

まるでイタリア人のような丸山さん。自然を愛し、新潟を愛す。日々、愛情と情熱を持って厨房に立つ。仕事中は寡黙のように思えるが、好きなイタリアのことになると目を輝かせて話してくれる。70歳になる頃には新潟のマンマと呼ばれるくらい、いつも笑顔で厨房に立っていることだろう。

focaccia e vino TETTO

新潟市中央区古町通4番町647 富士ビル1F

☎︎ 025−378−1320

11:00−20:00L.O / 日曜日15:00閉店 ※現在dinner timeは予約制

木曜日・第3金曜日定休


3. まきぐち農園

          マキグチノウエン

土と野菜に耳をかたむけながら。

 新潟市西区新通にある「まきぐち農園」は、美味しさはもちろん、安心安全にも配慮した野菜を栽培しているエコファーマーだ。私がまきぐち農園を知ったのは枝豆がきっかけだった。まきぐち農園の枝豆は香りや甘み、歯ごたえがよく、食べ出すと止まらないほど美味しい。新潟では、枝豆が晩酌だけでなくお茶うけとして、大皿やどんぶりに盛られて出てくることがあるくらい、枝豆好きだ。枝豆の味にはうるさい人が多い新潟で、まきぐち農園の枝豆は美味しいと多くの人たちから支持されている。

 まきぐち農園は代々家族が営む農家だ。もともとはお米だけを作っていたのだそう。1970年に開始された減反政策で、お米と枝豆を作るようになったと代表の槇口志伸さんは教えてくれた。

「粘土質で肥沃な土を生かした野菜を栽培しています。夏は枝豆、秋はお米を中心に作っており、その他多品目※1を作っています」

野菜は、採りたて新鮮なものを、市内の飲食店やスーパー、郵便局※2に出荷し、枝豆やお米は、地方発送も行っているという。

自然に近い環境で作物を育てる工夫

 まきぐち農園では、安心安全で美味しいお米や野菜を提供するため、農薬を極力控えて栽培している。今では当たり前に使用されている農薬だが、導入されたのは50年位前。それまでは農薬自体がなく、全てが無農薬栽培。生育や害虫対策として農薬が導入されたのだという。

「もともと父は農薬を減らした栽培をしていました。お米に関しては10年位前から、農薬50%削減、化学肥料50%削減した「特別栽培米※3」を作っています。害虫対策としては、成長度合いや天候などタイミングを見極めて農薬を使うことで使用回数や量を減らし、ピンポイントで与えています。また、生育期によって変わる水の管理は稲の成長にとって非常に重要なため、日々田んぼを見て周り、調整しています。”農薬は作物にとってお薬”なんです。害虫や雑草被害から作物を守るために予防接種のように使用しているんです。自然に近い環境で美味しいものを作れたらと思っています」

 最も自然な状態で育てているのは枝豆だという。美味しさにこだわったら、自ずと農薬の使用量が減ったそうだ。まきぐち農園の枝豆の美味しさがわかった気がした。

お米や野菜を美味しくつくるには

 美味しいお米や野菜づくりに欠かせないのは「愛情」という槇口さん。愛情といっても、雑草や虫の除去こそするが、そのほかは過保護にせず、基本ほったらかしにしておくという。

「枝豆の場合、畑に苗を植えてしまえば農薬は与えません。水もあげない。水は自然の雨を待ちます。自分で育つ力を引き出すためなんです。とはいえ、日々生育状況を確認し、必要な時にはすぐに対応できるようにしています。自分の力で大きくなった枝豆は美味しくなるんですよ」

もう一つ大切にしているのは「土づくり」だという。

「枝豆をはじめ野菜は土づくりが大事なんです。牛ふん、お米のもみ殻、畑で出た廃棄ゴミなど有機物を、微生物の働きで発酵・分解させて堆肥を作っています。この堆肥を土に混ぜると土壌の微生物が豊かになり作物への栄養となるため野菜、特に枝豆が美味しくなります。また耕す前に米ぬかを畑に撒くことで畑の地温が上がり土が柔らかくなるんです」

 美味しいお米や野菜づくりには、土や野菜の特性を知り、必要に応じて最小限の薬を与えることが大切なのだ。

 作物の栽培は自然を相手にしているため、天候に左右される。雨が多い時期は育ちが思わしくなく、収穫量にも影響を与える。収穫量が少ないと、急遽、他の野菜を植えて、減った分の収穫量を補わなければならないという。

 農協へは規格をクリアした限られたものを出荷しなければならないが、形がふぞろいでも美味しい野菜も食べてもらいたいと、理解のあるスーパーや郵便局へは規格外の野菜も出荷している。形がふぞろいでも新鮮で美味しいとリピートして買ってくれる方や、美味しいから県外の家族に送りたいと連絡くれる方もいるのだそう。

「お客さまから美味しいと言ってもらえることが何よりも嬉しいですね」と槇口さんはいう。


未来の農業について

 高齢者の農家や家族で営む小規模の農家は繁忙期など人数がいないと回らない時期もあり、人手不足は慢性的な課題となっている。小規模農家ではできることに限界があるというのが現状なのだという。

近年、消費者の安心安全のニーズが高まっている。農林水産省は地球環境問題への対応を含む「みどりの食料戦略システム」として、2050年までに化学農薬50%削減、化学肥料30%削減、有機農業に取り組む面責を100haに拡大するなどの目標を掲げた。実家の農業を継ぐ前に農協で働いていた槇口さんは、多くの高齢者・小規模農家の現状を見てきた上で、農林水産省が掲げた目標の達成は厳しいだろうと推測する。

「農薬を今の半分に減らすことは簡単ではないと思います。これまでに農林水産省は、何度も農薬を減らす政策を掲げてきたが出来なかった。全てを有機に変えるには、肥料自体の費用、栽培管理のための人員、有機栽培認証などお金も時間もかかるため、農家のがんばりだけでは無理があります。ただ、多くの農家が、農薬を率先して使いたいとは思っていません。化学農薬を減らそうにも農協の規格をクリアするため、見た目の美しさや管理のしやすさ、収穫UPのために農薬を使わざるをえない現状がある。どうしたら高齢者や少人数の農家が農薬を減らして作物をつくれるか、人手不足の解消やコスト改善のための補助金などの具体的な改善策が必要になると思います。また、そもそもの野菜の規格(ふぞろいだけど美味しい野菜)や農薬に対する正しい知識など、消費者間の理解と受け入れも必要になってくると思います」

 槇口さんが野菜づくりで大切にしている、土や野菜の特性を知ることは、農家の現状を把握した上で農業の未来を考える時の思考に通じるものがある。槇口さんのお話を聞いて、安心安全な作物や環境を手に入れるには、農家だけでなく、農薬削減を謳う行政、農薬や肥料のメーカー、消費者である私たちのバランスの取れた相互の理解と協力が必要だと感じた。

 まきぐち農園では、繁忙期には槇口さんの友人が作業を手伝いに来てくれるのだそう。取材に伺った日も槇口さんの友人お二人がお米のすじまきの手伝いに来ていた。10年後はどうなっていたいか槇口さんに尋ねたところ、「忙しい時に友だちが手伝いに来てくれて、農作業を楽しんでいってくれるんです。10年後、農業がもっとみんなの身近なものになっていると嬉しい。美味しいものをもっと多くの人に食べてもらえるよう規模を広げて行きたいですね」と語ってくれた。

 槇口さんをはじめ、奥様の露子さん、槇口さんのお父様も終始穏やかで優しい目をしていた。その眼差しは、野菜にも同じように注がれ、野菜もまた穏やかで優しく成長していくのだろう。

写真下段:微生物の働きで発酵・分解中の堆肥の山。健全な堆肥は臭わないのですね。

初めて知りました。


※1 栽培している野菜

春  ほうれん草、サニーレタス、春キャベツ

初夏~夏  空豆、玉ねぎ、ニンニク、枝豆、モロッコいんげん、プチトマト、ピーマン、ナス、オクラ、ジャガイモなど

秋~冬  キャベツ、ブロッコリー、かぶ、白菜、長ネギ、冬菜など

※2 購入できる店舗 真砂郵便局/月・水・金(夏場は毎日)

原信亀貝店・新通店/ある日は毎日

※3 その農産物が生産された地域の慣行レベル(各地域の慣行的に行われている節減対象農薬及び化学肥料の使用状況)に比べて、節減対象農薬の使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分量が50%以下で栽培されたお米。(農林水産省HPより引用)

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