COFFEE AND MUSIC

dAb COFFEE STORE

わたしの推しのエチオピア。


 水島町にあるdAb COFFEE STORE(以下、ダブコーヒー)は今年の12月で5周年を迎える。コロナ前に近い暮らしに戻った現在は、県内外の魅力的なショップやアーティスト、生産者を招いて、盛んにポップアップイベントを開催。出店者が気軽に話をしてくれ、時にはその場に居合わせたお客さんも加わり会話が弾むこともある。いつも店内は和やかな雰囲気に包まれている。それは色々な人に声をかけてくれる店主の小林大地さんと奥様の玲子さんの気配りのおかげでもある。以前、ダブコーヒーを取材させていただいた時に大地さんは「店としてコーヒーや焼き菓子が美味しいというのは前提にありつつも、ジャンルレスな人たちに来てもらい、一杯のコーヒーから、そこで様々な交流が生まれる店を目指している」と語ってくれた。コロナ禍で思うようにできなかったことが、今ようやくできるようになった。

ダブコーヒーで大地さんから焙煎を始めたんですと聞いたのは2022年12月。そのとき私は、大地さんが焙煎したコーヒーはどんな味がするんだろうと、とてもワクワクしたのを覚えている。ダブコーヒーでは今までLittle Nap COFFEE(以下、リトルナップ)やSTYLE COFFEE(以下、スタイルコーヒー)のコーヒー豆を扱っていた。その中でも私のお気に入りはリトルナップのエチオピア。ただ、私は浅煎りのコーヒー豆を自分でうまく淹れられない。自分で淹れるとコーヒー豆の果実による酸味ではなく、不快な酸味が出てしまうのだ。店では美味しくいただいているだけに、好きな豆だからこそ、自分で淹れたコーヒーに納得いかない。そんな私がついに大地さんが焙煎したエチオピアで、初めて店と同じ味わいのコーヒーを淹れることができた。とても嬉しかった。大地さんが焙煎した豆は日ごとにコーヒーの美味しさが増しているように感じる。苦味や酸味、甘みに香り、豆本来の味わいが渾然一体となって一つの輪郭をな成している。

 大地さんが焙煎するうえで一番大切にしていることは、自分が美味しいと思えるものを出し続けること。そのために「素材を大切にしています。コーヒー屋さんがみんなの日常になってもらいたいので、毎日通ってもらえるような値段で美味しい豆を選んでいます。豆によって焙煎を変えるのではなく、焙煎後の仕上がりの味を想定して美味しくなるような素材を選んでいます」と話す。コーヒー豆は、豆の品質や為替、需要と供給のバランス、気候変動などにより原価が高騰している。高価な豆を使えば美味しいコーヒーができるのは当然のこと。けれど大地さんは、お客が毎日でも通えるような価格帯の中から美味しい豆を選出し、素材の味を生かしてコーヒーが美味しくなるように焙煎している。それは、コーヒーが特別なものではなく、日常のものであることを思想としているからだ。

 ダブコーヒーでは、いつも決まった農園からコーヒー豆を仕入れているわけではなく、サンプルをもらえる業者からはサンプルをもらい、カッピングして美味しいと感じた豆を仕入れている。

「僕は色々な豆を飲みたいし、お客さまにも色々な豆を楽しんでもらいたいので仕入れる豆は変えています。焙煎は、豆や精製方法など様々な違いで焙煎方法が変わってくるところや、同じ国の豆でも同じように焙煎しても同じ味にならないところが面白い。焙煎した豆を試飲した時に美味しいって思えた時が焙煎していて一番嬉しいですね」

 新しいことを始める時は不安はつきものだが、大地さんもやはりリトルナップやスタイルコーヒーから自家焙煎のコーヒー豆に切り替えた時はお客さんの反応が気になったそう。そんな時に救ってくれたのはお客さんからの「美味しかったです」というひと言。

「お店を続けていく中で、単純にお客さまからの美味しかったですのひと言が嬉しいですね。日々、美味しかったと言ってくださるお客さまがいると嬉しいです。遠くからわざわざ新潟に会いに来てくれる人もいるんです。人が好きなので、そういうのもやっぱり嬉しいです」

これは大地さんの人柄、人徳でしかない。大地さんに将来どうなっていたいか尋ねたところ、「自分のことよりも、今は新潟のまちがもっと面白くなって欲しいと思っています。東京に出た若い子が地元に帰ってきたい、地元に帰ってあの店で働きたい、そんな風に思ってもらえるように自分たちから発信していく必要がある。いい店がどれだけあるかが、そのまちの楽しさでもあると思うので、もっといい店が沢山できて、もっとまちが賑わっていればいいなと思っています」と熱い思いを語ってくれた。大地さんらしい言葉だ。ダブコーヒーのdAbは音楽のDUBの『元々あるモノから手を加えて新しいモノをつくる』という言葉からきており、新潟のまちに新しいモノ、良い流れをつくるという意味が店名に込められている。ダブコーヒーは、一杯のコーヒーを通して、私たちが暮らすまちに様々な交流が生まれていくハブの一つになっている。


おいしいコーヒー豆ができるまで。

1. 店主の小林大地さん。

2. コーヒーの生豆が入った麻袋。

3. ドイツのプロバット社製焙煎機。豆ごとにレシピがあり、左側のタッチパネルの画面を見ながら火力や釜の中の温度を調節。釜の中でパチパチと音が鳴り始めたら(これを1ハゼという)、豆の特性に合わせて火力や釜の中の温度調節を行う。温度調節を行う度に数値を表に記載し、データを次回の焙煎に活かしている。

4. ときどき豆を取り出して焼き色や香りなどを確認しながら焙煎具合を見極める。焙煎が終了すると豆を釜から冷却槽に移し、撹拌しながら豆を冷ます。

5. 豆を撹拌している間に状態の良くない豆を抜粋し選別(最終チェック時にもう一度選別を行う)。

6. 豆が冷めたらバットに移す。焙煎前と焙煎後の豆の重さを計り、水分の抜け具合を確認したら、棚で休ませる。焙煎したては豆にガスが残っているため時間をおいたほうが美味しくなるそうだ。

7. テイクアウト用のかわいいパッケージ。


COFFEE AND MUSIC Selected by 小林大地

「今年リリース、ROWYARD RECORDSで購入したFenne Lily。当店でもヘビロテ中」


dAb COFFEE STORE ダブ コーヒー ストア

新潟市中央区水島町3−23 8:00-18:00(土・日・祝日9:00-18:00) 月曜日定休

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