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人気ミュージシャンが演じた真の70年代アメリカを体現するロードムービー「断絶」

 私が20代の頃はフリーペーパーが街の色々なところに置いてあり、好きな物の情報を集めては知識を深めていった気がする。おしゃれで個性的、マニアックなフリーペーパーが多かった。フリーペーパーだと制約が少ないからか、著名な人も皆自由に書いていて、書いた人の個性が感じられて読むのも楽しかった。

 今回紹介する映画は「断絶」(1971年)。私が20年以上前に出あったフリーペーパーに紹介されていた映画だ。監督はモンテ・ヘルマン。出演はジェイムス•テイラーとビーチ•ボーイズのデニス・ウィルソン。そのフリーペーパーでジェイムス•テイラーを「(当時人気だった)ACID JAZZのジェイムス•テイラーじゃないよ」と紹介していて、いつかこのネタを使いたいと思っていたのだ(タイムリーなネタじゃないので全然受けないことは承知です!)。オーデイションを受けた中にはアル•パチーノやロバート・デニーロもいたそうだが、人気ロックミュージシャンを起用したことにより、完成前から話題となる。物語はいわゆるロード•ムービーで、ザ・ドライバー(ジェイムス•テイラー)とザ・メカニック(デニス•ウィルソン)の55年型シェビーと1970年ポンティアックGTOをかけた長距離レース中の出来事が淡々と描かれている。当時ヒットした「イージー•ライダー」のような映画として期待されたが、ユニバーサルの重役が、従来のメジャースタジオ主導の大作映画に対抗して作られたアメリカン・ニューシネマのような新勢力に嫌悪感を示した。その背景には「イージー・ライダー」の大ヒット以降、従来の大作映画の不振によりメジャースタジオが苦境に立たされていたことがある。その為、公開告知のないまま上映。結果大惨敗を喫してしまったという。しかし、派手さはなく淡々とした映画だが、当時のアメリカの生活、空気感が感じられて私は好きだ。

 ジェイムス•テイラーのMUD SLIDE SLIM AND THE BLUE HORIZONのアルバムに収録の「ハイウェイ・ソング」はこの映画の撮影の移動中、当時付き合っていたジョニー•ミッチェルとライブをやったり、ホテルで曲作りをすることもあって、生まれたそうだ。

 ちなみに、この映画でザ•ガールを演じたのはローリー•バード。このフリーペーパーの名はBLUE BIRD。バードつながりということで「断絶」こそは初回に紹介する映画として良いんじゃないかと思った次第である。興味がある方はぜひ!

左から

MUD SLIDE SLIM AND THE BLUE HORIZON  /  JAMES TAYLOR

in the hand of the inevitable  /  the james taylor quartet 


text ・photo:Miyako Shimizu

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