02. ようこそCinecittàへ。

シネ・ウインド 井上 経久

小津安二郎「お早よう」


 むかし小津安二郎という映画監督がいました。代表作「東京物語」は世界映画ベストテンみたいな企画では必ず上位に挙げられる、日本を代表する芸術家の一人です。この小津監督が1959年に発表した微笑ましい映画「お早よう」は、ユーモラスかつ世代を超えて楽しめる点ですべての方に見てほしい映画です。

 ところは東京の郊外の新興住宅地。ここで暮らす男の子たちの間では「おならごっこ」が大流行。タイミングよく放屁すると「お前うまくなったなあ」と褒めあうのが爆笑です。そんな彼ら最高の楽しみは、近所の若夫婦宅にあるテレビで大相撲中継を見ること。勉強のふりをしながら日々テレビのために隣家を訪れます。でも若夫婦宅に息子が入り浸ることを、親たちは「勉強がおろそかになる」「教育上こまる」と言って良い顔をしません。子どもたちは親に叱られると、こう返します。

 

 子「だったらテレビ買ってくれよ」

 親「口答えするな。お前は口数多すぎる」

 子「大人だって意味ない挨拶ばかりじゃないか」

 親「うるさい、黙れ」

 

 こんな問答の末、ある兄弟は抗議のため誰とも口を利かない「だんまりスト」を行います。ところが彼らのストが大人たちに思わぬ波紋を呼んで…。

 テレビが貴重だった時代、今の子どもならスマホやゲームにあたるのかな。それに60年も前の映画なので服装や言葉遣いなど、現在とは異なる点もいっぱいです。でも大人社会の理屈と子ども社会の本音との距離や対立、他人の態度への思い込み、タイトルにもなっている日々の挨拶に込められた感情などは、今の私たちにも十分通じるのでは。それに今見られるDVDには日本語幕がついているので、小学生・中学生・大人それぞれのおなら音が文字で巧みに使い分けられ愉快です(そこ?)。1964年東京五輪も近い冬の一週間の物語。小津監督こだわりの色使いも楽しい、暖かい部屋のなか老若男女で見るのにコレおすすめです!


★2020年1月より月に1回、新潟日報おとなプラスにて井上さんの連載スタートです!

★シネ・ウインドよりお知らせです。

12/28(土)阿賀町ロケ作品「ある船頭の話」公開。

※12/31(火)& 1/1(水)は休館いたします。

※1/2(木)は映画鑑賞料一般1,100円、シネ・ウインド会員800円でご入場いただけます。


新潟・市民映画館 シネ・ウインド

新潟市中央区八千代2-1-1万代シティ第2駐車場ビル1F ☎︎025-243-5530

edit:Miyako Shimizu

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