プレゼント。

 人生の半分を過ぎている私は、残りの人生をどんな風に過ごすか、時々考えたりします。しかし、いつも思い浮かぶのは、先行き不安で暗いことばかり。考えるのも嫌になってしまいます。そんな中、今年の2月に、私の未来の指針となるような素敵な写真集と出会いました。その写真集とは新潟出身の写真家、山田博行さんの「Tuesday」。もともと星野道夫さんの本が好きだった私は、星野道夫さんが身をおいていたアラスカの自然に興味があり、冬が長いアラスカで自然の移り変わりを体験してみたい、寒いのが苦手なのでアラスカで暮らすことは無理だとしても、一度はアラスカを訪れて自然に触れてみたいと思っていました。そんな憧れのアラスカの自然とアラスカの森で暮らす人びとを写真に収めたのが「Tuesday」です。寒くて凍えそうなはずなのに、山田さんの撮る写真からは暖かさが感じられます。近くに生活に必要な店もなければ、娯楽施設もない。あるのは雄大で時には厳しい自然だけ。それなのに、そこで暮らす人びとは何とも楽しそう。なぜ、そんなに穏やかに且つ楽しそうに暮らしていけるのだろう。そんなことを考えていたら、私はいつの間にか世の中の価値基準みたいなものに囚われていたのではないかと気づきました。もっと自分の価値観で考えて、心地よい暮らしや楽しい暮らしを目指せば良いのではないかと前向きに思えるようになったのです。


 絵を描くことが好きな少年がいます。自分の左手を見ながら、想像力を働かせて絵を描いています。何事も長続きしない少年ですが、絵を描くことは飽きずに続けています。そして、いつしか将来は絵描きになりたいと思うようになりました。私は、手の絵を描く少年にぴったりな写真集を見つけました。タイトルは忘れましたが、色々なアーティストの様々な手の作品が収められた写真集です。ただ少年へのプレゼントには少々予算オーバーで、まだその時は絵を描くことも途中で飽きるのではないかと半分疑っていた為、買うまでには至りませんでした。その後、少年の絵描きになる夢は本当だと確信した私は、その写真集を買って少年にプレゼントしました。少年は写真集をとっとも気に入って、飽きることなく毎日のように繰り返し眺めているそうです。絵描きにならなくても、少年の生涯の友となるような存在になってくれれば良いなと思っています。


 山田博行さんの写真集と少年にプレゼントした写真集は、ともにBOOKS f3で買いました。ご存知の方も多いと思いますが、BOOKS f3は6月末で閉店しました。少年にプレゼントしたい写真集を見つけたのが確か4月の初め。その後はBLUE BIRD VOLUME04の取材や原稿書き、編集などで忙しく、店に立ち寄ることができませんでした。VOLUME04が完成し、6月末にmountain△groceryへフリーペーパーを届けに伺った時にyoyo.さんからBOOKS f3が閉店すると聞きました。突然のことで驚きました。mountain△groceryを後にし、BOOKS f3に寄って、少年へプレゼントしたかった写真集を買いました。店には既に閉店すると知らせを受けていた知り合いの方たちが小倉さんと話をされていて、その場の雰囲気から、変な気を使ってしまい、閉店のことには触れられず、普通に買い物をして店を後にしました。私がフリーペーパー作りを始める際にカメラのことで相談したのが小倉さんでした。またVOLUME01・02でも小倉さんにはお世話になりました。それなのに、ちゃんと挨拶できないまま閉店となってしまったことは心残りとなっています。私はBOOKS f3を通して、自分の情報網だけでは知り得ない写真家をたくさん教えてもらいました。そして、私も少年も未来の指針となるような写真集と出会うことができました。BOOKS f3で出会った数々の写真集は、小倉さんからのプレゼントだと思っています。5年半お疲れさまでした。そして、ありがとうございました。

0コメント

  • 1000 / 1000