5月のMemorandum。

昔からの馴染みの店。

 私が子供の頃は家で何でも行われていました。純和風の家の為、1階がやたらと広く、法事に盆や正月の親戚の集まりはもちろん、父母の結婚式も自宅で行われたそうです。祖父母の代から付き合いのある仕出し屋や酒屋、和菓子屋など、馴染みの店がありました。今では家で冠婚葬祭を行うことはなくなり、祖父母が他界してからは盆や正月の親戚の集まりもなくなった為、仕出し屋や酒屋を利用することはなくなりましたが、和菓子屋だけは慶事やちょっとした手土産など、事ある度に利用していました。

 昔からよく利用していたのは西区内野にある「にむらや菓子舗」の本店です。にむらや菓子舗のお菓子は、現在主流のあっさりとした甘さ控えめのつくりではなく、甘みも素材の味わいもしっかりと感じられるつくりのものばかり。母はどら焼きを事あるごとに注文していました。私もにむらや菓子舗のどら焼きを濃い緑茶かコーヒーと一緒に食することが好きです。内野にある本店は家から少し距離があるので、私は寺尾店を利用しています。母はコロナ禍に他界してしまいましたが、生前最後の母の日にプレゼントしたのが寺尾店で買った甘夏ゼリーでした。甘夏ゼリーを買うと「ゼリーを食べ終わったら、ぜひ皮をピールにして召し上がってください」と皮の活用方法を教えてくれます。無農薬の甘夏で作られている為、皮まで余す所なく安心して食べられますよという食材や生産者への愛情や信頼の気持ちが伝わってきます。

 今年も母の日に寺尾店で甘夏ゼリーを買って仏壇に供えました。甘夏ゼリーは甘夏のほろ苦さと寒天特有のプルンとした食感が堪りません。にむらや菓子舗では蓬饅頭も好物の一つ。蓬饅頭は笹団子と同様、蓬が旬の春に食べたくなります。買った翌日に食べる時は饅頭を蒸すと蓬の風味が際立って格別です。


手仕事。

 最近は週末になるとまちのあちらこちらでイベントが開催されています。5月11日と12日に古町ルフルの広場でNIIGATA COFFEE MARCHEが開催されました。県内外から美味しいコーヒーの店が集まるのですから、コーヒー好きには外すことのできないイベントです。私はそんなに多くコーヒーを飲めないので、好きな店と気になった店でコーヒーを一杯ずつ注文。今回は「三角フラスコ」がコーヒーの提供ではなくフードの提供で参加すると聞き、コーヒー以外をいただいたことがなかった為、楽しみにしていました。所用を済ませてから会場に向かい、会場に到着したのは14時頃。既にフードは完売していましたが、自宅用に自家製グラノーラを買うことができました。三角フラスコのグラノーラはレーズン少なめ、ナッツ多めの配合で、香ばしさとザックザクした食感が際立つ美味しさでした。

 最近は家で過ごす時間がめっきり少なくなってしまい、買い物も仕事帰りに職場近くのスーパーで済ますことが多いのですが、久しぶりに土曜日に家でのんびり過ごせる日ができたので、家から自転車で15分くらいのところにある原信新通店へ3•4日分の食材を買いに出掛けました。目的は西区新通にある「まきぐち農園」の野菜を買うことです。まきぐち農園の野菜は人気なので夕方に買いに行くと完売していることが多く、お昼過ぎを目指して行きます。毎度お昼過ぎには到着しているのですが、原信の隣のTUTAYAに入っているタリーズコーヒーが私を誘惑します。ちょっとだけコーヒーを飲みながら雑誌を読んでいこうと私を誘うのです。タリーズコーヒーに入る時は雑誌を3冊ほど抱えて店に入ります。雑誌に夢中になり過ぎて、あっという間に時間が過ぎてしまい、気がつくと夕方になっていることも少なくありません。もちろん夕方ではまきぐち農園の野菜は完売しています。だったら買い物前ではなく買い物した後にタリーズコーヒーに寄ればいいではないかと思うのですが、食材が痛むのではないかと気が気でなく、嫌なのです。

 今回はタリーズコーヒーの誘惑に勝ち、まきぐち農園のほうれん草を買うことができました。まきぐち農園の野菜はいつもきれいに処理されて袋詰めされています。今回買ったほうれん草は、自宅で洗わなくてもいいのではないかと思うほど土がきれいに洗い落とされており、葉や茎はしっかりしていてハリがあり、瑞々しいうちに袋詰めされていました。商品を手にとって見ただけで、丁寧に愛情を持って育てられたんだなと感じられます。まきぐち農園の野菜が人気なのは美味しさだけではないのだと思います。

※ほうれん草の水切りに使っている竹ざるは3月にGUGUGUで開催された“THE GREAT ISLAND TREND KILL”で購入した「本田竹店」のざるです。

◼︎まきぐち農園についてはVOLUME 04の「わたしのSmile Food。」およびcontentsから記事をご覧いただけます。

 「三角フラスコ」のグラノーラにはヨーグルトと自家製マーマレードをトッピング。「まきぐち農園」のほうれん草は好物の胡麻和えにしていただきました。

※竹の箸置きは3月にGUGUGUで開催された“THE GREAT ISLAND TREND KILL”で購入した「本田竹店」の箸置きです。


わたしはHAND派。

 代官山のヒルサイドテラスに新潟出身の料理家、坂田阿希子さんのレストラン「洋食 KUCHIBUE」があります。「洋食 KUCHIBUE」の前は46年続いたサンドウィッチの名店「TOM’S SANDWICH(トムスサンドウィッチ)」がありました。私はトムスサンドウィッチを初めて訪れた時、カルチャーショックを受けました。“BLT”を頼んだのですが、厚切りのトーストにベーコン、たっぷりのレタス、トマトがサンドされ、ドーンとお皿に盛られたアメリカンなラフな佇まいとボリュームに目が釘付けになりました。それからサンドウィッチにはナイフとフォークが添えられていたのですが、私はサンドウィッチは手で食べるから美味しいのだという持論があり、ナイフとフォークを使わずに食べていたところ、ナイフとフォークを使わずに食べていたのは私一人だったことに驚いてしまいました。隣に座っていた学生さんは参考書を読みながらサンドウィッチを上から剥がすように小さく切り分けて上品に食べていて、都会の人はなんと上品に食すのか、私はそんな食べ方では全然サンドウィッチを食べた気がしないと心の中で呟いたことを今でも鮮明に覚えています。サンドウィッチはカジュアルな食べ物なのでカトラリーを使わなくても使ってもどちらでもいいそうなのですが、ボリュームのあるサンドウィッチを食べる時はフォークを下まで刺してからナイフで一口サイズに切り分けていただくそうです。厚みのあるサンドウィッチはナイフとフォークを使っても大口になってしまうので、だったら両手でがぶっといきたいと思ってしまうのです。

 トムスサンドウィッチで人気のメニューの一つに“キャベツベーコン”がありました。私は“BLT”一辺倒だったのでトムスサンドウィッチで“キャベツベーコン”を頼んだことがなかったのですが、トムスサンドウィッチの“キャベツベーコン”を思わせるサンドウィッチが古町の「Bar Hallelujah」(以下、ハレルヤ)にあります。ハレルヤといえばクラフトのジンやバーボンですが、今回は“ベーコンとキャベツのホットサンドイッチ”について紹介します。“ベーコンとキャベツのホットサンドイッチ”はざくぎりキャベツの食感とマスタードとガーリック、マヨネーズが効いていて美味しいのです。今回はパンから具がはみ出ないようにきれいにサンドしてくれていますが、いつもはトムスサンドウィッチの“キャベツベーコン”のようにラフにサンドされています。サンドウィッチに添えられている大ぶりの自家製ピクルスも美味。ハレルヤではサンドウィッチを頼むとフォークだけが添えられています。フォークはピクルスを食べる時に使用し、サンドウィッチは手で食べてねということだと私は解釈しています。手で食べるサンドウィッチはなぜだか美味しい。料理の佇まいと食べ方は直結しているような気がします。

◼︎Bar HallelujahについてはVOLUME 02の「good vibrations」とVOLUME 04「新潟T わたしの愛するTシャツたち」、VOLUME 06「ぼくはお酒と雑学がすき」およびcontentsから記事をご覧いただけます。


Phantasia

 5月15日から27日に東中通にある「Little Light theater(Bar Book Box STORE)」で開催されたYuki Edamura個展『Phantasia(ファンタシア)』を見に行ってきました。私はYukiさんのことは存じ上げなかったのですが、SNSのタイムラインに流れてきた美しい写真を見て、実際に作品を見てみたいと思い、個展へ足を運んだ次第です。店内には淡い乙女心を呼び覚ます作品が数多く展示されていました。プロの写真家が撮ると、ふんわりとした雰囲気の幻想的な写真にもどこかピントが合うところがあるのですが、Yukiさんの写真の多くはピンとが合っていないものばかり。その曖昧さが見る者をファンタシアに誘ってくれるのでしょうか。いえ、曖昧さだけではファンタシアには誘われません。やはり写しとられた物体から醸し出される淡さ、揺らぎ、煌めき、儚さ、美しさがファンタシアへ誘うのでしょう。写真を近くで見ると、シフォンの生地を貼り付けたりペイントを施したりコラージュされているものもあり、被写体に立体感が出ていました。Yukiさんは不在でしたが、Bar Book Box STOREの豊島淳子さんによると、写真は全てiPhoneで撮られたものだそうです。

 Yukiさんの作品を眺めながら店内でいただいたのは個展に合わせてつくられたアルマニャックをベースとしたカクテル「ファンタシア」です。自家製ジンジャーコーディアルが効いていて味わいも香りもファンタシア。鎚起銅器のカップでいただくと熱の伝導率が高いため冷えたカクテルを長時間楽しめる上に口当たりも良く、まろやかに感じられました。暖かい日の昼下がりに飲むファンタシア。店を出て見た景色がファンタシアに見えたのは言うまでもありません。


まち中においしいがいっぱい。

 5月はおいしいイベントが沢山ありました。ほんと、おいしいものをいっぱい食べて飲みました。友人と一緒に行ったイベントもありましたが、おいしいものへの欲望を抑えられず、一人で立ち寄ったイベントもありました。人見知りなので、一人だと特に緊張から、お酒の効果も相まってテンション高めで喋ったりリアクションが大きくなったり、いつもと違う自分に疲れてしまうことが多々あり(なんかうるさいなと思ったら、緊張して酔っ払っていると思っていただいて結構です)、人が集まるイベントは得意ではないのですが、私を知っている方に声をかけていただいたり、県外から仕事で来ていらしゃった方とお話ししたりと、楽しい時間を過ごすことができました。ありがとうございました。

写真左:5月19日に東堀の「ITALIAN RESTAURANT LIFE」(以下、LIFE)で開催された佐渡の「T&M Bread Delivery SADO Island」(以下、T&M)のパンの販売会に行き、この日のために用意されたLIFEとT&Mのスペシャルコラボメニューをいただいて来ました。T&Mのライ麦パンとカンパーニュを使った2種類のオープンサンドはワインにぴったり。パンを知り尽くしたマーカスさんが選んだワインなんだから最高に決まっています。デザートにT&Mの看板商品アップルパイも忘れずに完食しました。

写真左から2番目:古町の「Focaccia e vino TETTO」では、イタリアのバールスタイルで営業する日があります。5月24日はバール営業の日だったのでこの日のために用意された料理を味わいに行ってきました。ランチでは食べられない手打ちパスタもちゃんとメニューに入っていました。腰のある手打ちパスタはハーブのソースと絡んで絶品。締めのデザートではボンボローネをいつものコーヒーではなくワインでいただきました。お酒は強くないので店を出る頃には顔がワイン色に染まっていました。

写真右から2番目:5月19日に水島町の「dAb COFFEE STORE」(以下、dAb)で開催されたTACOS PARTY with THE LONG RIDEへ行って来ました。サッカーファンではない私でさえもいつものdAbとは雰囲気が違うサッカー熱を異常に感じた店内。タコスの具は幸せを呼ぶ黒毛和牛。清水酒店がワイマーケットのビールを注いでくれ、豆豉が効いたタコスと一緒にいただいた時の口福間といったらありません。タコスの箸休めにはさっぱりしたタコのマリネが最高でした。

写真右:新潟駅前にある「新潟 長谷川屋」で5月26日に開催された東京・日本橋兜町にある創作フレンチ「Neki」とナチュラルワインのインポーター「RACINES」によるポップアップイベントに行って来ました。ワインに合う肴といえばフレンチフライ、ハムやパテにリエットなどが定番ですが、気がつくといつも決まったメニューを頼んでしまいがちです。新潟に県外の有名店が来てくれた時も、気がつくといつもの定番メニューを頼んでしまい、もっとその店の味がわかるメニューを頼めば良かったと後悔することがありました。私のようなお客は少なくないと思います。今回はそんなお客の気持ちを主催者側が汲みとってくださり、メニューの構成からメニューが一目見てわかるように写真付きの表まで作成してくれていました。今回のイベントのために考えられたメニューはどれも美味しそうで全種類制覇したかったほど。ポテトサラダ一つとっても盛り付けや味付けに手を抜かず、パスタでさえ手打ちという本気度溢れる素晴らしい一品。実際に日本橋の店へ食べに行きたいと思わせる料理の数々でした。ワインも気になっていたポルトガルのワインをいただけて満足。おいしくて楽しく、温かい気持ちになるイベントでした。


ありがとうございました。

 5月31日で万代にある「パンとワインと三弥」(以下、三弥)が閉店しました。三弥は落ち着いてゆっくり過ごすことができる好きな店の一つでした。私は万代へ映画を観に行く前や観に行った後によく立ち寄たりしていました。私は常連とはいえませんが、それでも三弥がなくなるのは残念。寂しいです。好きな店は滅多に行けない店であっても行きたい時に店が開いていて欲しいとつい願ってしまいます。 

 私が三弥で最後にいただいたのは海南鶏飯とワイン。上の写真は、テーブルに運ばれてきた瞬間に写真を撮ることを忘れてしまい、一口食べた後に慌てて撮った写真です。それほど海南鶏飯はおいしいのです。じっくり味わいながらいただきました。 

 オーナーの佐藤さんは忘れてしまったかもしれませんが、私に製作費を出すので三弥のフリーペーパーをつくって欲しいと依頼してくださった初めての方でした。その時はまだフリーペーパーをつくり始めて2年も経っておらず、3冊つくっただけではわからないことだらけ。自分のフリーペーパーがお金をいただけるレベルのものではないとわかっていたのでお断りさせていただきました。次に出すフリーペーパーで取材させてくださいというのが精一杯だったのです。佐藤さんから声をかけていただいた時はとても嬉しく、申出に応えたかったのに応えられない自分が悔しくもありました。次号のVOLUME 04で取材させていただいた時には、佐藤さんに何でも聞いてくださいと仰っていただき、店のこと、ワインのこと、店と関わりのある仲間のことなど、目を輝かせながら話してくださった佐藤さんを今でも鮮明に覚えています。まだ佐藤さんは「煮込みと酒と錦弥」にいらっしゃるので会えないわけではないのですが、三弥での最後の食事の時にふと佐藤さんとのことを思い出してしまいました。佐藤さん、三弥の皆さん、今までおいしい時間をありがとうございました。

◼︎パンとワインと三弥についてはVOLUME 04の「つながる。つづく。」およびcontentsから記事をご覧いただけます。


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