和田誠界隈 まなびの日々

 BLUE BIRDをはじめて3年。かつて冊子づくりもしたことがなく、写真もiPhoneで備忘録的に撮影する程度の私は、何もわからぬまま「やるぞ!」という勢いだけでBLUE BIRDを始めました。特にVOLUME 01の時はインタビュイーの皆さまにはご迷惑をおかけしてばかり。取材をさせていただく中で、冊子づくりについてインタビュイーの皆さまから教えていただいたり、気づかされることが沢山ありました。冊子が完成しても課題は山積み。原稿を書く際に、インタビュイーの言葉をそのまま載せなくてもいいんだ、読み手に伝わるように編集していいんだと気づいたのも最近のこと。しかし、良かれと思って編集しすぎてインタビュイーの伝えたかった言葉から遠くなることもしばしばありました。写真に関しては、未だに印刷用に色をCMYKに変換することが上手くできず、今度こそ大丈夫だろうと思っても、刷り上がりの色がくすんでしまったり、また、ミラーレスのカメラで撮影しているにも関わらず、iPhoneで撮影するのと同じような粗い画質だったり、反省は尽きません(しかし、CMYKに変換する際のコツや画像の粗さについては、ネットで改善方法を見つけたので、次号に向けて練習を重ねていこうと思っています)。

 周囲から、新潟にもフリーペーパーをつくっている人はいたけれど、長続きせずにやめてしまったとの話を聞いたことがあります。私は続いている方なのだそうです。私がBLUE BIRDをつづけているのは、自分が好きな店や人から直接お話を聞けることの楽しさもありますが、一番は、次回はもっといいものをつくりたいという欲求かなと思います。取材させていただくからには、ちゃんとインタビュイーの思いを読み手に伝えたい。だから文章は絶対に疎かにしたくない。更に欲をいえばデザインをカッコよくしたい。PhotoshopやIllustratorは使えないから、アナログ的になってしまうけれど、アナログの手法でもカッコよく見せる方法を模索したい。プロであれば、こうしたら良いという解決策がすぐにわかると思うのですが、私はいろいろな人の意見を聞いて試しながら解決策を探っている状態で、かなり遠回りをしています。今は一人で全て冊子づくりを行っていますが、決して一人でしたいとは思っていません。一緒に冊子づくりに携わってくれる方がいれば大歓迎です(HPのトップ【はじめに】に募集内容記載しています!)。


 先日、新潟県立万代島美術館で開催中の「和田誠展」を観に行ってきました。やはり私の関心ごとは制作について。どういうことを大切にして、どのように制作していたのかに興味があります。和田さんは本の装丁を沢山手がけていますが、本のカバーデザインの指示書にはイラストや文字に色の三原色(C:シアン、M:マゼンダ、Y:イエロー)の数値だけが記載され、色が塗られていないものが展示されていました。和田さんはこの色はCとMとYをどの値にすると出せるというのが頭の中でわかっているのかと感心してしまいました。展示後に読んだ和田さんの著書「装丁物語」によると、基本的には、絵に色鉛筆で色を塗り、カラーチャートで確認しながら数値を記載していくそうです。よく描くものに関しては勘を頼りに思い通りの色が出せるそうですが、ベテランの和田さんでもちゃんとカラーチャートで確認をしているそうなんです。和田さんの展示や本から、まずは出したい色の数値を調べ、近い数値に近づけてRGBからCMYKへ変換すればいいのだと気づいたのでした。

 和田さんの作品には品とユーモアを感じます。和田さんは幼い頃から絵の才能があったようです。4歳頃に書いた絵日記を見ると4歳でこんな絵は描けないでしょうと思うくらい絵が上手。しかも、田中一光が在籍していたデザイン会社「ライト・パブリシティ」に入社する前の大学3年生の時にデザイナーの登竜門と言われていた「日本宣伝美術会」に入選しているんですよね。ちなみに同じ年に入選しているのは横尾忠則さん。60年代の広告はまだクライアントよりもデザイナーが主導権を握っていたため、今では見られないようなユーモアやデザイン性に富んだものが多かったというのも興味深かったです。

 和田誠展を観た影響で和田さんの本を買って読みました。大学卒業後に入社したライト・パブリシティでの話を中心とした「銀座界隈ドキドキの日々」は和田誠展で観た作品にまつわる話も沢山載っていて大変面白かったです。為になることもありました。本をつくる時は取材前から本の設計図的な企画書をつくるということを知りました。写真は何をどんな風に撮り、どこに配置するか事細かく決めたり、文章の文字数を決め、写真や文章のレイアウトを決めておく。私の場合は表紙を含むデザインについては、取材をして原稿を書きながら考えていましたし、原稿や写真のレイアウトは原稿を書き終えてから考えていました。やはり冊子に統一感を出すにはデザインやレイアウトなど事前に決めておいた方が良いんですね。

Canonの広告

Canonの広告とNATIONAL(現Panasonic)の広告

左上:誰かと思ったらムッシュでした!

右上:キュートな徹子さん♡

左下:ダンディーなフランク・シナトラ

右下:「アニー・ホール」のウディ・アレン&ダイアン・キートン


 本といえば、最近私が読む本はNIIGATA SUBURBIA在住の13才ボーイからの影響が多いです。小学5年生までは本当に本を読まないボーイで、名作と言われている絵本や児童文学にも全く興味を示さず、この先どうなるのだろうかと心配していたのですが、12才になり、読める漢字が増えてきたからか急に大人びた本を読むようになりました。変り種ですと、瀬戸内寂聴やカフカ。12才のボーイがなぜ瀬戸内寂聴に興味を持ったのか。カフカは「変身」を読んだそうなんですが、村上春樹よりも先にカフカを読むという謎のボーイなのです。よくよく話を聞くと、絵が好きなボーイは大好きな横尾忠則さんについて掘っていったら瀬戸内寂聴やカフカに辿り着いたそうなんです。そんなボーイは読んで面白かった本の話を熱く語ってくれるのですが、その影響で私もあまり縁のなかった村上隆の「芸術起業論」「芸術闘争論」、そして先に挙げた和田誠の「銀座界隈ドキドキの日々」を読むに至ったのです。ちなみに村上隆さんの本は、世界に通用するアーティストになりたい人への指南書でもありますが、現代アートはよくわからないという人にとっても現代アートの楽しみ方の指南書になると思います。現在ボーイは村上春樹に夢中で、村上春樹の全作品読破を目指しています。やっと村上春樹に関心を示すようになったようですが、ミドルエイジが推す初期の鼠三部作にはあまり興味を示さず未読。おしゃれなシティボーイにはなれそうにもありません。

 本に夢中なボーイを連れて行きたいと思ったのが、市役所前にある「北書店」。ボーイとともに北書店へ何度か足を運ぶも、私がちゃんと定休日をチェックしないため、訪れる日はいつも定休日。先日やっと北書店が開いている日にボーイを連れて行くことができました。ボーイは店に入るや否や気になる本を見つけて高揚している様子。ちょうど新潟県立万代島美術館で和田誠展が開催中ということもあり、和田さんや和田さんと繋がりのある人たちにまつわる本や雑誌が陳列されている一角があり、欲しい本がいっぱいだと喜んでいました。店を出るや否や、「僕、この店好きになっちゃった。今度お小遣いを貯めて買いに行くよ」と13才のボーイらしいかわいらしい発言。ボーイを北書店に連れていくことができて良かったと思ったのでした。やっぱり本屋を訪れる時の楽しみは、読んでみたいと思わせる本との偶然の出会い。店には自分で手にとって選ぶ楽しみがあるんですよね。

 店に復帰したばかりの店主の佐藤さん。ボーイが真剣に本を選んでいるのを待っている間、佐藤さんが仲の良いお客さんと楽しそうに話をされている声が店の奥まで聞こえてきて安心しました。私はあまり気の利いた返答ができないので、少しだけ話して「また来ます」と一言。私が北書店を再訪する前に、先日ボーイは北書店を再訪したそうです。きっとボーイは「また来ましたよ」と心の中で呟きながら店に足を踏み入れたに違いありません。

■最近購入した本:左から

取材時にRerunの小川さんから教えていただいた 藤原ひろのぶ 文 / ほう 絵「買いものは投票なんだ」

取材時にMAIさんから教えていただいた 岸政彦「断片的なものの社会学」

北書店にて購入した 和田誠さん関連で堀部篤史「火星の生活 LIFE ON MARS」、筒井康隆「あるいは酒でいっぱいの海」、横尾忠則「見えるものと観えないもの」

和田誠展を観に行った際にミュージアムショップで購入した和田誠「装丁物語」、「銀座界隈ドキドキの日々」

萬松堂にて13才のボーイに薦められて購入した村上隆「芸術企業論」と「芸術闘争論」

マイク・ミルズ監督の映画「C'mon C'mon」が良かったのでネットで取り寄せたrelax library 007「MIKE MILLS finding the film」


■一番左のキャンドルフォルダー

MAPSにて購入したcandleholderはLandscapeproductsによる商品。フォルムが美しいミッド・センチュリーのスカンジナビアの陶器をローズウッドで再現しているそう。


■北書店についてはVOLUME 02かcontentsの「NO BOOKSTORE,NO NIIGATA LIFE」にて記事をご覧いただけます。

■Rerunの小川さんから教えていただいた本についてはVOLUME 05かcontentsの「MY FAVORITE THINGSが見つかる店。」にて記事をご覧いただけます。

■MAIさんから教えていただいた本についてはVOLUME 05かcontentsの「カルチャーあ」にて記事をご覧いただけます。

■萬松堂についてはVOLUME 02かcontentsの「NO BOOKSTORE,NO NIIGATA LIFE」にて記事をご覧いただけます。

MAPSについてはVOLUME 05かcontentsの「MY FAVORITE THINGSが見つかる店。」にて記事をご覧いただけます。

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