シン・カメラを止めるな!

 私が映画の長回しで思い浮かぶ作品は、前代未聞の長回し映像と話題になった「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(2014年)や、オープニングが印象的な「ラ・ラ・ランド」(2016年)、無名の監督・俳優・低予算にも関わらずSNSの口コミで全国公開へと拡大し大ヒットとなった「カメラを止めるな!」(2017年)です。他にも長回し作品は観たと思いますが、お年頃なのかよく覚えていないんですよね。これらの作品は、上手く編集されており、全編ワンショットで撮影されたものではありません。

 先日、シネ・ウインドで観てきた「ボイリング・ポイント|沸騰」は、なんとノー編集、ノーCG。全編90分間をワンショットで撮影しているんです。クリスマス前の金曜日の夜、ロンドンの高級レストランを舞台に、崖っぷちに追い詰められたシェフの波乱に満ちた一夜を描いてた作品です。はじめは、全編ワンショットで撮影されたなんて嘘なんじゃないの、と疑っていたのですが、長回しのライブ感が半端なく、ドキドキしながら見入ってしまい、ついには最初の目的を忘れてしまいました。曲と曲をスムーズにつなげていくDJのように、シーン毎に入れ替わるキャストとキャストをスムーズにつなげていくカメラマンによるカメラワーク。90分間、誰一人一つのミスも許されない緊張感。それがリアルさを生むのでしょうか。よくあるストーリーなんですけどね、どうやら映画に携わった人たちの”こういう作品を撮りたいんだ”という情熱に観る者は引き込まれてしまうようです。

 そういえば、ひとつ気になる点がありました。冒頭でキッチンの衛生検査があり、シェフのアンディがスタッフの手洗いや手袋の装着など、衛生管理官に指導を受けているシーンがあったのですが、シェフ自身が出社してから手を洗ってないじゃん、ゴミを捨てに行った後に調理についたジェイクは手を洗ってないよね、などとツッコミを入れたくなるシーンが度々ありました。多分、飲食で働いたことのある人だったらわかると思います。この気持ち。


「ボイリング・ポイント|沸騰」はシネ・ウインドで9月16日まで上映しています!

■シネ・ウインドについてはVOLUME 03の「ようこそCinecittàへ。」およびcontentsから記事をご覧いただけます。

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